第4章 誰を養う?
誰もがトド松を見た。
それもそのはず、この戦い…違った、面接はニートである彼らの生活がかかっている。
そうやすやすと放棄できるものではないはず。
それをあっさりと辞退すると発言した、彼の真意を知りたかったのだ。
「…どういうこと?」
「やっぱり、こんなのおかしいと思うんです。兄弟で争って、母さんにまだ養ってもらおうなんて」
よく言ったトド松。
チョロ松でさえ張り詰めた空気の中言うことが出来なかった正論を、彼は迷うことなく言い切ったのだ。
もしこの場に誰もいなければ私は彼を崇め奉っただろう。
「離婚はすごく悲しいことだけど…でも僕達が自立するチャンスだし!」
トド松が、彼が輝いて見える…!!
今彼は、1人の人間として旅立とうとしているのだ。
これは大きな事件だった。
末っ子である彼が自立することは、兄達に何らかの影響を及ぼすに違いない。
私はそう思って拳を握る。
「母さん、今までありがとう。僕、1人で生きてみるよ!」
なんて素晴らしいんだ。
いや、世間一般では当たり前のことなんだが。
(………?)
しかし何かが引っかかる。
面接やる気満々だった彼がどうして突然辞退する気になったのだろうか。
初めから思っていたのならこの場がセッティングされる前に言えば良かったのに。
チョロ松も何も言わなかったが、この空気をおかしいと思っているとはいえ彼自身内心は親に養ってほしい。
そんな彼が面接を止めることはしても辞退をするとは考えられない。
何がきっかけで、彼は辞退を決意した?
トド松を見つめると、彼の視線はまっすぐとこちらに…否、彼の母親に注がれていた。
まるでそう、何かを訴えかけるようにキラキラとした瞳で…。
まさか…!
「待って」
松代さんの制止に部屋を出て行こうとしていたトド松の足が止まる。
「合格よ」
トド松の口角が、ニヤリと上がった。