第3章 取引先もハタまたすごい
台車に積まれた納品たちを別の部屋に移動させるといって、上司とお付きの人が出て行き、部屋には私とミスターフラッグだけが残された。
「…あの、ミスターフラッグ」
「ハタ坊」
「…え?」
「僕ハタ坊っていうジョー。にはそう呼んでほしいジョー」
沈黙に耐え切れず話しかけてみると、思いもかけない返事が来た。
なるほど、ミスターフラッグってそういうことだったのか。
教えてもらった彼の本名に納得するものの、なぜそれを私に教えてくれるのか分からない。
「い、良いんですか?まだ会ったばっかりの他社の社員に」
「どうしてダメなんだジョー?はもう友達だジョー!友達には名前で呼んでほしいジョー!」
友達。そう、彼は言った。
まだ互いに何も知らないのに、もしかしたら害を与えるかもしれないのに。
何のためらいもなく、言い切った。
"いつ会ったかなんて関係ないの!もう友達なの!オッケー?!ウィーアーフレンド!!"
先日大声を出した、おそ松のように。
「…?どうしたジョー?」
「いえ、何でこんなにこの町の人たちは優しいのかなって…思っただけです」
私のことを何も知らないときに友達になってくれた人なんていなかった。
皆私の向こうにある何かを見ながら私に接していて、私のことなんてどうでもいいようにさえ思えた。
なのに、この人達は…この町の人たちは。
"私"を見て、話をしてくれる。
「よろしく、お願いします。………ハタ坊」
「!!よろしくだジョー!」
だからその優しさに、甘えたい。
その温かさに、包まれたい。
「あ!出来れば敬語もやめてほしいジョー」
「仕事の時以外なら、やめますね」
「ありがとうダジョー!約束ダジョー!」
「はい。ふふっ…」
「?何が面白いジョー?」
「いえ、あなたが似てるんです。昨日会った人達に」
「…の友達ダジョー?」
「…そうですね、友達です。やかましくて、面白い」
私もあなた達を、友達と呼びたい。