第3章 取引先もハタまたすごい
「さ、いかがなさいますかミスターフラッグ?」
ミスターフラッグのお付きの人(やたら旗を推すおじさん)と上司がダブルでミスターフラッグに迫る。
彼は難しい顔をして考え込んでいた。
………やけにシリアスな顔だ。
たかが旗、されど旗といったところなのだろうか。
彼らにとって旗とはそんなにも大事なものなのか。
というか私としてはお尻に刺すくらいなら頭に刺すと思う。
まぁどちらにせよ遠慮したいところではあるが、きっとこの会社では旗を刺すことが義務付けられているのだ。
社員の負担を減らすため、頭を悩ますミスターフラッグ。
社員思いの人なんだなぁ。
「はどう思うジョー?」
と思ったそばからコレですか。
自分の社員でもない人に考えを聞いちゃうんだ、横のお付きの人に聞けばいいのに。
私に聞いておじさんちょっと涙目なんですけど。
しかし答えないわけにはいかない。
でも上司がすごい目で私を見ているし、下手な答えをするわけにもいかない。
結局、当たり障りのない答えしかできなかった。
「そう、ですね…確かに頭に旗を刺すことに抵抗を覚える人はいるかもしれませんし、別のとこに刺すのは良いと思いますが…果たしてその人達がお尻に刺したいかどうかはちょっと…」
「…っ、す、素晴らしい!!!」
「……はい?」
と、突然発言を遮られた。
叫んだのはお付きの人で、感動したように震えながら拳を握り締める。
私も上司も、そしてミスターフラッグも訳が分からないという顔で彼を見つめた、
「今日初めてここに来たというのに…もう旗使いが完璧だとは!!!」
「…いや旗使いって何ですか?!」
「隠さなくても良いのです。"ハタして"と言ったではありませんか、これぞ旗へのリスペクツ!!」
「リスペクツって何ですかリスペクトですか?!」
「ほんとだジョー、すごいジョー!」
「す、すごいんですかこれ?!」
何だか知らんがやたら褒められた。
特に何も考えずに発した言葉がどうやら彼のお眼鏡にかなったらしい。
「もそう言ってることだし、買うジョー!」
「ありがとうございますっっ!!」
「…私何を言いましたっけ」
ミスターフラッグに旗買うよう勧めたつもりはこれっぽっちもなかったんだけどな。