第2章 忠告の意味
「ふっ、大丈夫だ。照れているだけだと分かっているからな」
「そのポジティブシンキングはどこから来るんですか…」
気付けばカラ松さんはいつも通りに戻っていた。
こうしてカッコつける彼と先程みたいに気弱な彼と、どちらが本当の彼なのかはまだ分からない。
まあどちらにせよ、面白い人だという私の認識は変わらないだろう。
「じゃあ俺たちのことも呼び捨てで呼んでよ、さん付けなんてよそよそしいじゃん!」
「え…良いんですか?」
「良いよ良いよ、じゃんじゃん呼んじゃって!ついでに連絡先交換しよ!」
「あなたはそればっかですね…えっと、トド松?」
「うん正解!俺は!?ねえねえ俺は?!俺!俺!俺!」
「オレオレ詐欺ですか、十四松」
よく見ると彼らは似た顔だけどそれぞれに特徴があって、覚えるのはそんなに難しくはなかった。
名前を当ててもらえてご満悦な十四松の頭を撫でると、彼は嬉しそうに笑う。
不覚にもその笑顔に癒されてしまった。
その挙動に驚かされてばかりいたけれど、この子物凄く可愛いな。
「あーあと敬語も禁止ね!よそよそしい!他人!」
「いやでも今日あったばっかですし」
「いつ会ったかなんて関係ないの!もう友達なの!オッケー?!ウィーアーフレンド!!」
「うるさいよおそ松兄さん」
チョロ松が宥めてくれるも、そのおそ松の気迫に押されて思わずうなずいてしまいタメ口で話すことも決定した。
顔が怖かったのもあるけど、実は友達と呼んでもらえて嬉しかったというのもある。
前いたとこは友達なんて雰囲気じゃなかったから。
あったかく迎えてくれる人達なんて久しぶりで、私も気が緩んだのかもしれない。
「じゃあ、改めて…これからよろしく」
「こちらこそ!」
このとき私は、イヤミさんの言葉を気にしないことに決めた。
人の言葉に惑わされるなんて馬鹿馬鹿しい。
私は私が見たものを信じよう。
私が見た、明るくて楽しいこの人達を信じよう。
そんな思いも込めて、六つ子と握手を交わす。
後でLINE教えてねとちゃっかりしたトド松と。
野球しよ!と腕を振り回す十四松と。
目は合わせてくれなかったけど握手に応じてくれた一松と。
照れ臭そうに頬をかくチョロ松と。
強引に、でも暖かく私を受け入れてくれたおそ松と。
そして。