第1章 プラネタリウム(HQ/二口堅治)
「二口くん、二口くん」
「……何ですか」
「上見て。上」
「上?」
促されるまま仰向けになり、飛び込んできた無数の輝きに目を奪われる。
満天の星空とは、まさにこのことだろう。秋の澄んだ空気の中夜空に浮かぶ、数えきれない星、星、星。控えめなものもあれば、一際目を引くものまで。宝石を砕いて散りばめたような。
「んふふ、綺麗でしょ?この前見付けた取って置きの場所なんだよ?」
息を呑む二口を見て満足げに笑うと、は気取った声音で告げる。
「プラネタリウムへようこそ。二口堅治さん」
「は?プラネタリウム……?」
「二口くん、プラネタリウム見たことないって言ってたから」
ぱちんと、電気が付いたみたいに記憶が甦る。
どういう流れだったか、プラネタリウムを見たことがないという二口に、「じゃあ今度見せてあげるね」と答えた。
……覚えてたのか。そんな他愛もない話。
じわりと切ないような苦しいような衝動が胸に競り上がる。
「二口くん、変な顔」と何も知らない顔で頬をつつくの手を誤魔化すようにぺしっと落とす。
「ていうか、プラネタリウムって屋内で投影機で見るやつでしょ。なんで天然もの」
「だってこの辺にプラネタリウムなんてないし?」
「…………」
「大丈夫大丈夫。これでもちゃーんと星座について調べて来たんだから。さてさて、気を取り直してプラネタリウム間もなく開幕となります。今回は初回サービスで無料だからたっぷり堪能して行って」
そういって悪戯っぽく笑うと、はスッと右手を真っ直ぐ上げる。