第1章 プラネタリウム(HQ/二口堅治)
「まずオリオン座。二口くんも知ってるよね。砂時計みたいな形の星座で、左上の赤い星がペテルギウス。右下の白いのがリゲル」
穏やかな声がすぐ耳をくすぐった。
「真ん中に斜めに三つ星があるでしょ?実はあれ星じゃなくて星雲なんだよ」
の小さな指が星の間を滑る。その指の下から現れていく星が、まるで彼女の手によって生み出されていくようで。目が離せない。
人気のない河川敷で二人きり。
触れ合えるほどの距離で星空を見上げる。
辺りはあまりにも静かで、お互いの呼吸との声のみが支配する。二人きりで宇宙に放り出されたようにさえ思えて、不意に心もとなく感じた。
すがるように芝生の上に手にをさ迷わせると、ひやりとしたものに触れる。の手だ。星を生み出す魔法の手。
そっと握れば、それまで朗々と辺りに響いていたの声がピタリと止まる。
何事もなかったようにプラネタリウムは再開したが、じわじわと熱が移る小さな手はそっと二口のそれを握り返した。