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【短編集】シュガーを一匙、ミルクはお好み

第1章 プラネタリウム(HQ/二口堅治)




仕方なく腰を降ろせば、涼しい夜風が二口の髪を揺らす。
 部活後の火照った二口には心地よいくらいだったが、にとってはそうではなかったらしい。

「……へっぷし!」
「うわっ、汚なっ!ちょ、ティッシュティッシュ!」
「ありがと、二口くん。ずびー!」

 男子の前だと言うのにこれっぽっちも恥じることなく、豪快に鼻をかむ彼女の奔放さに顔をひきつらせる。
 ……俺、何でこんな女らしさの欠片もない人のこと気になってんだろ。

 脱力した肩が隣のの肩に触れ、ジャージ越しに移ってきたその冷たさに驚く。

「なんでこんな冷えてるんですか!?いつからここに!?」
「うーん……?」

 鼻の頭を赤くしながらことりと首を傾げる。聞くだけ無駄だと悟った二口は、鞄から自分の制服のブレザーを出してに押し付ける。

「ほら、とりあえずこれ着て!」
「ふへへ、ありがと」

 もそもそと二口のブレザーを羽織り「おっきいね。二口くんに抱っこされてるみたい」としまりない笑顔で言う。

「二口くん?おーい、二口くんや。どったの?」
「ほっといて下さい!!」

 がしていたように寝転び、彼女に背を向ける。赤く染まった顔を見られないように。

「つーか、こんなとこで寝こけて、俺が気付かなかったらどうするつもりだったんですか?あそこにある文字見えます?」
「んー?うーん……まぁ、二口くんなら見付けてくれるかなって」

 ……何なんだよその謎の自信は!
 全く調子が狂う。いつもは軽い言動で人を振り回す側の二口だが、この人にばかりは通じない。
 彼女の突拍子もない言動一つ一つに振り回されてばかり。でも、それを悪くないと思ってしまうのだから質が悪い。

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