第3章 玉砕、のち(刀剣乱舞/御手杵)
突っ伏しかける私の顔を、御手杵は両手で挟み強制的に上げさせる。
精神的大ダメージを食らい、既に虫の息の私に、これ以上何をしようというのか。
「……昨日、泣いてたのか。風邪じゃなくて、俺のせいで」
未だ赤い目尻を、かさついた指が撫でる。強制的に見せられた御手杵の顔は……なんというか、喜びを無理矢理抑えているような、何とも形容し難い表情だった。
「……何その顔」
「何って」
「何で嬉しそうなの」
「いや、だって。俺随分愛されてるなー、と」
機嫌良さそうに私の頬をむにむにと弄り、にやつく御手杵。猛烈に腹が立つ。
「だから!振った癖にそういう思わせ振りなこと言うのやめてって言ってるの!何!?私が苦しんでるの見て楽しいの!?」
「悪い。結構楽しいかもしれない」
申し訳なさそうに肯定された。
もう起こる気力すらなくして、御手杵のむかつく程すべすべな肌を死んだ目で眺める。
というか本当にキメが細かいむきたて卵肌だ。スキンケアという概念すら知らなさそうな癖になんだこれは。世の女たちに喧嘩を売っている。
「んー、なんつーかさ。俺、お前のことはダチとしか思えないけど、そういう風に俺のこと好きでいてくれるの、すっげー嬉しいんだわ」
「は……」
「だからさ、これからも俺のこと好きでいてくれよ」
一瞬、何を言われたのかわからなくなる。
控えめに笑いながら告げられたものの、その内容はとてつもなく傲慢だった。
「……御手杵さ、私のこと振ったよね?」
「そうだな」
「友達としてしか見れないって言ったよね?」
「そうだな」
「その癖私にはそのまま好きでいてほしいって?今そう言ったの?」
「そうだな」
…………馬鹿なの?
怒りや呆れを通り越し、ただただ呆然とした。