第3章 玉砕、のち(刀剣乱舞/御手杵)
「まぁ、確かに俺は馬鹿だけど。何もそんなにはっきり言わなくてもいいだろ」
「いやいやいやいや、意味がわからないんだけど?何で堂々と友達宣言されて振られたのに好きでいなきゃいけないの?無理だよね?寧ろ友達でいられることすら怪しいよね?」
「やってみなきゃわかんねぇって。最初から諦めるなよ」
「お前が言うな」
「そうだね。諦めないで挑戦しようとするその姿勢は大変素晴らしいね。……で、私もそれに倣って授業を諦めたくないのだけど。どうかな?二人とも」
いつの間にやら会話に割り込んできた第三者の声。
ギギっと音がしそうなほどぎこちなく顔を上げれば、古文担当の石切丸先生が困ったように微笑んでいた。
時計は既に授業開始時刻を5分ほど過ぎている。
クラスメイトたちの好奇の視線が集中していることに気付き、さーっと血の気が引いていく。
……聞かれてた?御手杵とのやり取りを全部?
救いを求めるように視線をさ迷わせれば、頑張れよとばかりにクラスメイトたちから小さくガッツポーズやらウインクやらをされる。神などいない。
ふっと意識が遠退く私の前で、御手杵は至極真面目な顔で手を上げた。
「はい、先生。コイツに好きでいてもらうためにはどうしたら良いと思いますか」
「そうだねぇ……。じゃあ、折角だから今日は彼女の心を射止める、恋文にしたためられたような和歌について勉強しようか」
宣言通りの授業内容に私は終始撃沈し、御手杵はいつになく熱心に授業を聞いていたそうな。
後日、告白したはずの私が逃げ、振ったはずの御手杵が追いかけるというなんとも奇妙な追いかけっこが開始される。
その姿を全校生徒から生暖かい目で見られ、「リア充爆発」と呟かれることなんて、この時の私には知るよしもないのだった。