第3章 心臓が鳴りやむ前に。
私は何をしているのだろう……。
小学生の頃ムカつく奴で、今もムカつくから嫌っているこいつに、こんな失態を見せてしまうなんて……。
「……けんな。」
「えー?何、聞こえなぁい。」
「ふざけんな!!」
「!」
聞こえなぁい。のところで耳をそば立てる真似をしていた蛍は、とっさのことに耳の位置を戻せなかった。
耳が痛いとでもいうように耳を押え、こちらを睨みつけてくる。
「何?ふざけんなって。ふざけてるのは花乃の方じゃないの?俺の事なんて……。」
「は?」
「……勝手に人の事決めつけて、態度帰るような奴が、何言ってんだっつってんの!」
「………………」
決めつけて、って、蛍はいつもムカつく奴じゃん。
対して影山君は敬語だし、ちゃんと優しくしてくれるし……。
(って、なに影山君思い浮かべてんだか……。)
私は私自身に呆れて、なんかよく分からないけどキレたっぽい蛍を残して体育館に戻ろうとした。
「ちょっと。逃げるの?」
「別にそんなんじゃないし。そろそろ戻らないとだな、って。」
「僕も戻るし。」
「勝手にすれば?」
「………」
私は無視することにした。
構っていればいるほど嫌になってくるこいつの態度に、付き合っている暇があるなら有効活用しろよ、って思ったから。
蛍はあんなこと言ってたのについてこなかった。
私は残りの片づけを手伝ってから玲奈を残して帰路についた。
……ただ、一人で帰りたかったからだ。
「つーきしーまくんっ♪フラれたな?」
「……そんな顔で言わないで。」
「まぁまぁ、人生、そんな簡単にいくもんじゃないし、月島の場合、性格が悪いからな~。」
月島に睨まれながらも体育館の影から登場したのは玲奈と菅原だった。
「月島君ってさ、玲奈の事、好きだよね?」
「……は?……」
「認めんでいい。お前はそれでいい。だが一言言っておくとな……。」
菅原は座り込んでいる月島の顔の前に自信の顔を持ってきた。
「女の子にきつい言い方をしちゃいけないべ★」
「……。」
「あたしからももう一つ。」
菅原が離れると、今度は後ろから玲奈が月島の顔を覗き込んだ。
「玲奈もね、最初は影山君のような真面目なタイプがいいと思ってるけど、やっぱり愛を説かれたら弱いよ?」