第3章 心臓が鳴りやむ前に。
「ねぇねぇ、菅先輩♪」
「清水さん……。」
菅原の元に、玲奈が近寄る。
「先輩、男の子って何されたらドキドキしますか?」
「はは。翔陽だったら何やってもドキドキすると思うよ。」
「え~?もっとこう、決定的な何かが……。」
菅原が座っているところの隣に清水が座り込む。
「日向ってなんか、恋愛なんかしないっていうか……部活が恋人っていうか……?」
「それ言ったらみんな同じ。だからマネの清水……あ、苗字一緒なんだよね。困ったな……って、顔コワいよ?」
「日向も清子さん相手には緊張する……やっぱり美人はオトク……はあ。」
落ち込んでいる玲奈の頭を菅原が励ますようにポンポンと叩く。
その様子を、体育館裏から二人の影がひっそりと見つめていた。
「……恋人にはなってないんだよネ?」
「多分……っていうか、さっきの試合で玲奈、翔陽君に惚れたし。」
「マジで?」
「そこ笑うな。」
私は蛍の頬を軽く殴る。
すると蛍はムスッとして……
「ほんと、なんなの?花乃ってさ……」
蛍は私の顔をいやってほど見つめてくる。
「何よ。文句あるなら言ってこい。」
「……バカだ。」
「はぁ?」
「しー。」
急に変なこと言ってくんな!
私は怒って今度は蛍の腹を殴る。
「……さっきより力強い。痛い。すごくイタイ。」
「絶対痛がってないよね。棒読み過ぎるし。」
「……ほんっと可愛くない。」
「あぁ?」
「しー。」
(ない、ケンカ売ってんの!?)
蛍の意図が読めなくなって、私はもう話を切り上げようと立ち上がった。
「どこ行くの?」
「体育館戻る!あんたは一生此処にいていいよ!」
「なわけナイじゃん。僕も戻るし。」
蛍はそう言って立ち上がる。
「一緒に戻ったら何してたのかって聞かれない!?」
「田中さんには聞かれるカモね。」
「んな適当な。大体――!?」
蛍の悪口を言おうとしたら、蛍は急に自分の指を私の口元に持ってきて塞ぐ。
「……なによ。」
「その顔やめて。嫌な気分になるし。ってか、唇でふさがなかっただけいいと思って?」
「な……」
蛍のその急な一言に、私は思わず動きを止めた。
その様子に蛍はびっくりしたようだったけれど、ふっと鼻で笑った。
「何、意識した?」