第3章 心臓が鳴りやむ前に。
抱きしめられた……。
しかも、いつもムスッとしている影山君に……。
(ギャップ!!ギャップありすぎだから!!)
私は内心猛泣きしながら影山君に尋ねる。
「あのさ、もしかしてこういう反応って慣れてるの?」
「えっ!?」
そういうと、影山君は慌てて離れた。
「そんなわけないじゃないっスか!!お、俺だって何していいかわからないし、泣かれたら困るだけだし、拭うにも顔触ったら失礼なんで服で、ってことで……。」
影山君はそこまで言うと、顔を急激に赤く染め、後ろを向く。
「もしかして……泣いて無かったっスか……?」
「……うん。ごめん☆」
「俺の緊張を返してください。」
「ゴメンナサイ。」
とにかく素直に謝った。
影山君はやっと振り向いてくれて、その顔はまだ少し赤かった。
「やめてくださいよ、ほんと。加賀さんがなんか泣いてるとこっちだって苦しいんですから。」
「え?」
「さっきだって、あいつには声援送ってるのに俺には何も言ってくれなくてちょっと悔しかったし。」
「なんか頭殴ってたしね……。」
「なんかムカついたからッス。」
「……………。」
「あと、月島の事は蛍って呼んで、日向の事は翔陽君って呼んで、菅さんのことは菅先輩って呼んで、俺は影山君って、一番遠い感じがするじゃないっスか。」
「……あぁ、うん。」
「…………呼び方変えてくれないんスか?」
「え!?じゃあ、飛雄君!!」
「っ!!」
影山君はまた急に後ろを向いてしまう。
(えっと……これは、もう……。)
「じゃあ、話は済んだんで……呼び出してスンマセンでした。」
「あぁ、うん。気にしないで。」
それじゃ、と言って飛雄君は走って行ってしまう。
先ほどの話の内容……嫉妬?
ってことは……
『やきもち?』
声がかぶった!?
誰かと確認しようと振り返ったら、そこには服が。
…………。
嫌な予感はするものの、見上げると……
「うぅ~……蛍だ。」
「キミさ、王様に好かれてんの?」
「知らない。」
「だって今の会話……」
「聞いてたの!?」
「完全に王様のやきもち……本人気づいて無いっぽいケドね。」
「……やっぱり?」
蛍とこんな話をするなんて思わなかった。
しかも、話はこれだけじゃなかった。