第2章 知り合い
「そういえばさ、どうして影山君ってあんなにすごいの?」
「え……すごい……ッスか?」
影山君は少し照れたように問い返してきた。
「うん。あの狙いを定めた完璧なトス!こう、ダーンって!」
「あれはもう慣れと、練習っスかね。ボールの感じがわかっていればその場でもなんとか……」
「できちゃうんだ!すごい!」
「あぁ……ハイ。」
呆気にとられる影山君を無視して私は考える。
(もうプロって感じ!影山君よりうまい人なんているのかな~?)
「ねえ、影山君より強い人って……はっ!?」
言葉の途中から影山君の顔が酷いものになった。
「い、いるんだね……?」
「……及川さんっス……。」
「及川さん?」
(聞いたことあるような、無いような……?)
「俺とは違って、本当に……その、上手くて……。」
「憧れなんだ~。そういう人がいるっていいな~。」
「え……いないんスか?」
「う~ん……まぁ、ね。」
嘘だ。
憧れみたいな、妬ましく思えるような人ならいる。
でも、認めたくなかった。
……だって、あの蛍だから。
「……その、身長とかで悩むことってないっスか?」
「!?」
「あ……スンマセン……。(汗)」
私は思いっきり怖い顔を見せてみた。
すると影山君は少しびっくりしたような表情を見せたけれど、すぐにプッと吹きだした。
「なにおう!?」
「いや、スンマセン!ほんと、もう……あいつとかぶって。」
(あいつって翔陽君だよね。翔陽君も身長で悩んでそうだワ……。)
「うん……なのにさ、アイツは何だって持ってるし……。」
「あー。月島っスか?身長高いっスよね……。」
「だから、なんで私の考えていることをピンポイントで当てちゃうかな!?(泣)」
「え!?スンマセン!?」
「意味も分からず謝ってない!?もう泣くよ!?マジで泣くよ!?」
私は怒っているふりをして嘘泣きまで初めて見せた。
影山君は慌てたようだったけれど、ふと何も言わなくなった。
(やば。怒ったかな……?)
私は慌てて顔を上げると……
『ふわっ』
……という音がするような優しい抱きしめ方をされた。
「(What!?何!?この状況?)」
「スンマセン。だからホント……泣かれると困るんで……。」
「(だからって抱きしめる!?)」