第1章 クラスメイト
菅先輩が来てからは、翔陽君と菅先輩、影山君と田中先輩に分かれて練習を始めた。
影山君は田中先輩にはトスを上げるので、翔陽の目が羨ましいと叫んでいる。
よっぽど打ちたいのか、菅先輩との練習にも身が入っていない。頭にボールが落ちてくるのも気にならないらしい……。
「俺も打ちたい!俺にもトス上げてくれよ!!」
とうとう言いだしおった……。
影山君が困っているのが目に見えた。
菅先輩や田中先輩も困り顔を見せている。
っていうか、菅先輩が呼んでいるのには気づこうよ!
「……嫌だ。」
影山君は、後ろを向いてそう言い放った。
ガビーンという効果音が聞こえてきたような気がした。
影山君以外の人の表情が酷いものになっている。
「なんだよ、ケチか!!」
「そうだそうだ!!」
「田中先輩、どっちの味方ですか……。」
「……。」
影山君は黙ったままボールを上に投げ、翔陽君に向かって打った。
翔陽君はレシーブの形で対応しようとするも、ボールは上には飛ばず横の方へ飛んで行ってしまう。
「正面だぞ今。レシーブあってのトスと攻撃だ。それがぐずぐずのくせに、偉そうに言うな。」
影山君ははっきりとそう言った。
昨日、私に対して気を使わせないようにしてくれた優しい影山君ではなく、バレーに対して本気になっている影山君だった。
その冷たい言い方も、本気だからこそなのだろう。
「土曜の3対3では、トスは極力田中さんに集める。攻撃は田中さんに集める。お前は足を引っ張らない努力をしろよ。」
土曜日……。影山君にとっては、どんなものなのだろう。
影山君のセッターをかけた試合……。中学の頃からのポジションでなくなったら、影山君はきっと嫌なのだろう。だから練習にも本気なのだ。
大事な試合だからこそ、下手な翔陽君に任せるわけにはいかない……そういうことだ。
つまり、翔陽君がうまくならなければ、翔陽君にトスは上がらない……。