第6章 鈍い音
「はぁっ…はぁ…っ…」
まだ顔が熱い。
勢いとはいえ、私さっき、亜久斗…に、抱きしめられてた…。
亜久斗はほんのり温かくて、なんだか安心してしまって…。
「悪魔のくせに」
本人はいないけどどうしようもなくなった気持ちを紛らわせるために、皮肉を込めてつぶやいた。
と。
「あらぁ??雪華さんじゃなーい、亜久斗くんは一緒じゃないのかしらぁ??」
わざとらしい。
美姫あんた!家反対じゃない!!
くぅっ!言ってやりたい!!
とりまきたちも可哀想ね、こんな奴に付き合わされて。
「透くんの次は亜久斗くん?」
「ほーんと、嫌な女ね」
しつこいな。
「だから、透なんて知らないって言ってるじゃない。それに、なんであいつ…亜久斗が出てくるのよ」
通して。と目で言って、美姫たちの間を割って帰ろうとする。
「っ…ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃねぇよ!!!」
ドンッ
え…。
美姫に身体を押された。
もみ合っていただけに、バランスを崩し、私は道路に飛び出した。
ビタンと、痛々しい音を立てて。
ブブーっ!!!
まだハッキリしない頭に響くクラクション。
運転手の焦った顔。
迫り来る車のナンバー。
美姫たちの焦った声。
全てがゆっくりに見え、鮮明に聞こえた。
あぁ、私死ぬんだ。
なんて思った。