第4章 片羽のワケ
「はぁ…はぁ…お前思ったより足速い…」
雪華に連れて来られたのはプールサイド。
雪華と俺が初めてあった場所。
真冬にプールサイドに来る奴らはいないだろう。
なるほど、さすがに賢い。
「で、さっきの…なんで、そう思ったのか…教えてくれる?」
明らかに震えている声。
寒さからくるものではない事は俺にはわかった。
「…昨日、図書館でいろいろ調べたんだ。どういう場合に片羽にさせられるのかとか」
「…それで?わかったの?」
俺は首を横に振った。
罪を犯した時にかせられる重い刑罰だということしかわからなかった。
どれが重罪になるのかまでは書かれていなかったのだ。
まったく。何が『天使界掟全書』だよ。
「じゃあなんで私の恋愛と関係があるって…?」
「あぁ、それは、悪魔のカン?」
「は?」
ギロリと雪華の目が光った。
悪魔の俺が、悪魔なんじゃないかと見間違うくらい鋭かった…。
「って、てのは冗談で!!実は…」
俺は昨日の夜にしたことを1つ1つ雪華に伝えた。
図書館で資料を見たこと。
その後に、こっそり天使界に侵入し(バレたら殺される)、天使達の刑罰の復歴を調べた(これもバレたら殺される)。
そして見つけた。
16年前。雪華が雪華として転生する前に、若い女天使がある罪を犯して、片羽を失ったこと。
男を、死にかけの男を救ったらしい。
でも、逆に言えばそこまでしかわからなかった。
第一、つい最近知り合っただけの片羽天使の過去がこんなにも気になるのがよくわからなかった。
命をかけた割には、大した情報も得られなかったし。
だから後は、雪華本人に確認するしかないと思ったのだ。
話を聴き終えると雪華は、いつの間にか閉じていた目を開けた。
そしてゆっくりと息を吐き
「…わかった。詳しく、話すよ。私も誰かに…話したかったんだ」
少し寂しげに笑う雪華。
切なげなその表情を見て"綺麗だ"と思った自分がいた。