第4章 片羽のワケ
早朝、教室には雪華しかいなかった。
まぁ、こんな朝早くから来る奴なんているほうが珍しい。
雪華は俺に気づいたくせに、目を向けようとすらしない。
いつもと同じく頬杖をついて窓の外を見つめている。
「よぉ」
「…なに。またきたの?」
「俺はここの生徒だからな」
「さっさと魔界に帰れば?悪魔さん」
くっそ。
なんでこんなに機嫌悪いんだよ。昨日よりツンケンしてねぇか?
…昨日…。
「なぁ」
「なによ」
「昨日のこと…なんか、その、悪かったな…言って欲しくないこと言ったみたいで…」
「…?」
なんで謝るの?と言いたげに、雪華は体ごと後ろを向いた。
「なんかお前が怒ったとき、自分でもよくわかんねぇけど、焦ったんだよ…んで、俺なりにいろいろ調べて、これは俺の憶測なんだけど…」
"片羽になった理由は、お前の恋と関係あるんじゃないのか?"
言い切ったかもわからない時だったけど、ガタンと勢い良く音を立てて雪華は立ち上がった。
「待って…それ、どうして…!」
雪華が次の言葉を発しようとした時だった。
教室にパラパラと生徒が入ってきた。
これはとてもじゃないけど、天使だの悪魔だの話せる状況じゃなかった。
しょうがない。続きはまた雪華の部屋にでも行こう。
とか考えていたら突然腕を掴まれた。
「きて」
「え…お、おい!」
俺の返事を聞く前に、雪華は俺の腕を引っ張ってどこかへ向う。
俺は引っ張られながらもついていくしかなかった。
「美姫おはよー」
「あ、おはよー…って、ねぇあれ」
「うわ、雪華と亜久斗くんじゃん!」
「あいつ、透くんの次は亜久斗くん狙ってんの…?」
「マジありえねー」