My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ
「雪! ユウ! そんなことは後さ!」
急に切羽詰ったラビの声がして、強く腕を引っ張られる。
「バレた!」
顔を青くして言うラビの見る先には、リンクさんとの騒動を聞きつけたのか。通路を塞いでいた亡者の群の姿があった。
「ガルルァ…!」
「ガァアア!!」
涎を口からほとばしらせながら、こっちに向かってくる。
ま、まずい!
「逃げるぞ!」
慌てて立ち上がり様に駆け出す。
神田にのされて転がっているリンクさんに、頭を下げることも忘れずに。
ごめんなさい、ゾンビ化の醜態は黙っておきますから!
「でも何処に…っ」
「こっちさ!」
体は小さくても、流石はエクソシスト。
大人に引けの取らない身のこなしで前を走る二人の後を追う。
外は轟(とどろ)くような嵐。
真っ暗で広い教団の中。
何度目になるかわからない、亡者との追いかけっこの末。
「──はぁ…ッ…も、生還できる気がしない…っ」
「生還って、何処に帰るってんだよ…っ」
「寿命縮まったさ…ッ」
ぜいぜいと息をついて、何処ともわからない部屋に逃げ込んだ。
もう嫌だ、この追いかけっこ。
本当に寿命が縮まる。色んな意味で。
「これじゃあリーバーさん達を捜すどころじゃないよ…」
ずるずると壁に凭れたまま座り込んで、再び意気消沈。
少し出歩いただけで、こんな有様なんて。教団内部は人が多過ぎます。
「もう外に出て、他支部に助け求めた方がいいんじゃないかな…」
「外の出入り口まで、無事に辿り着けたらの話だろ」
…確かに。
通信室も亡者の群で、食堂だって恐らく未だ沢山の人が徘徊している状態。
外の出入り口まで続く道も、亡者で塞がっていないとは限らない。
完全に立往生です。
そんな神田の言葉に希望も見えず落ち込んでいたら、辺りをそわそわと見渡すラビが見えた。
なんだろう。
「どうしたの?」
「此処、科学班の備品室さ」
見渡す部屋には棚が沢山並んでいて、其処には科学班が作った薬品や機材や資料や、様々な物が置いてある。
「それがどうした」
「あー…いや…うん」
何か策でもあるのかと思えば、そうじゃないみたいだ。
神田の言葉に歯切れ悪くラビが苦笑する。
なに。