My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
なんで神田がそんな反応を示したのか、わからないけど。可笑しなことを言ってる気はないから、そのまま言葉を続けた。
「痛みだって感じるでしょ。私と同じに、空気を吸って生きてるでしょ」
食事して、睡眠を取って。
他人より多く摂取しなくても平気かもしれないけど、全く不必要という訳じゃない。
神田は生きてる。
私達と同じに。
「人と少し違うだけで、同じ人間なんだから。いつか私と同じに…"死"だってくる」
いつかくるものだとしても、簡単に奪われたくない。
私の、大切な人だから。
「私は…神田と生きていたい。一緒にいたいよ」
その胸元に額を押し付ける。
永遠なんて望まないけど。
この命が続く限りは、生にしがみ付いていたい。
…欲塗れな想いだけど。
そんな想いでも…私自身のものなら、綺麗だってクロウリーは言ってくれたから。
「だから…あんまり自分を酷使しないで」
エクソシストである神田に、そんなことを頼むのは無理な願いかもしれないけど…神田は人より怪我に無頓着だから。
もっと自分を大事にして欲しい。
「……お前には人間に見えんのか」
返された言葉は、あまりに予想外のものだった。
「俺が」
ぽつりと問われた言葉に、思わず顔が上がる。
見えたのは、変わらない静かな無表情の顔。
…というか。
「当たり前だけど」
何言ってんの。
「私、神田のこと人間じゃないなんて思ったことないけど」
そりゃあ、第二使徒のことを知った時は驚いたけど。
でも他人に造られた存在だからって、人間否定をする理由にはならない。