My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
「…じゃあ縮まってでもいいから、寝る時は傍で寝ろ」
「え?」
肩に乗る神田の顎。
ぴたりと密着して寄せられたその口から、零れた吐息が微かにかかる。
「それならもう寒くねぇだろ」
傍で囁かれる声は、低くて優しい。
「……うん」
ああ、本当。
昨夜から神田に胸を掴まれっ放しだ。
直接肌と肌で触れ合う体温は、酷く心地良くて。
そんな触れ合い、したことなかったから。
こんな温かいものがあるんだと、泣きそうになった。
「…あったかいね」
回された腕に手を添えて。目を瞑って浸るように呟けば──
「……それと、」
何か付け足すように、続きを言葉にしてきた。
うん?
「どうせならこっち向いて寝ろ」
「…え」
「昨日は希望通りに部屋を暗くしてやったろ。お前の顔、まともに見れてねぇんだよ」
え、それって。
今ここで振り返れってことですか。
…裸なのに?
「おい」
「……え、と」
「雪」
「っ」
当たり前のように聞き慣れない名を呼ばれて、思わずぴくりと反応してしまう。
「こっち向け」
「…ぅ…」
それ、わざとやってるのかな…。
だとしたら反則なんですけど…。
「……」
緩められる腕の中で、おずおずと振り返れば。
すぐ近くに、薄暗くてもはっきり見える神田の顔があった。
結んでいた髪は下ろされていて、サラリとそれを枕に流してこっちを見てくる顔。
その下には鎖骨や引き締まった胸板が──…見ない見ない。
「──…ぁ」
目を逸らそうとしてふと、そこで目が止まってしまった。
神田の左肩から胸にかけて刻まれた、大きな呪符模様。
これ…確か"第二使徒"の呪符、だよね。