My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
「神田が、好き」
ちゃんと云ってなかった言葉。
多分ローマのあの病室で、神田は私の囁きを聞いてはいたんだろうけど。
こうして面と向かっては、伝えてなかったから。
一瞬息を詰まらせた目の前の神田が、動きを止めたかと思えば…次に感じたのは優しい抱擁だった。
「…ああ」
私のお腹に放った自身の白濁としたものもお構いなしに、体を密着させて抱きしめてくる。
確かな抱擁なのに、とても優しい腕。
「俺も──…好きだ」
囁かれた言葉は、泣きたくなる程に温かい音色をしていた。
嬉しくて、泣きたくなる。
そんな思いを抱かせてくれるのは、いつもこの人なんだ。
優しい肌と声の抱擁。
それを体全体で感じながら、最後に見えたもの。
それは暗闇の中でも不思議と感じ取れた、優しく笑う神田の顔だった。