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My important place【D.Gray-man】

第35章 抱擁



「ぁ…ハァ…は…っ」


 脱力した体で、荒い息を零す。
 強く抱きしめていた腕が緩む。


「はぁ……雪、…」


 すぐ傍で深い吐息と私の名を呼ぶ声が聞こえる。
 僅かに身を起こして、その顔が覗き込んでくる。
 サラリと頬に一瞬触れる、長い神田の黒髪。


「…大丈夫か…?」


 真っ先に口にしたのは、私を伺う言葉。
 最初から最後までずっと優しく扱ってくれている神田の言動に、また胸がきゅっとなる。


「…ん」


 短い返事だけでも、大丈夫だと伝わったらしく。
 その汗ばんだ手の甲が労わるように、頬を優しく撫でた。

 いつもと違う、熱を帯びて少し温かい手。
 なのに触れているとドキドキさせながら、同時に落ち着かせてくれる。
 神田の手そのものだ。


「じっとしてろ。今拭いてやるから──」

「…ぁ」


 離れようとする体に、咄嗟にその腕を掴む。


「後で…いい」


 今はまだ触れていたい。
 感じていたい。
 神田のこと。


「…ここに、いて」


 下半身は痛むしお腹に吐き出された神田のものも、気にはなるけど。それ以上にまだ神田を感じていたくて。


「……」


 そんな私に、神田は黙ったままその身を寄せてくれた。

 ゆっくりと近付いた顔が、優しくキスを落とす。
 触れるだけの、本当に優しいキス。
 それだけで胸がいっぱいになる。
 胸の奥がじんとして、熱くなる。





「──…好き」





 零れ落ちた言葉は、極自然なものだった。

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