My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
『デビット、大人しくしてて。出てきちゃダメだよ』
『わかってるっつーの。いいから飯ー』
『だから静かに…っ』
『じゃあどうするの…っ?』
『──!』
帰ってきた施設の廊下を歩いていると、耳に飛び込んできた声に思わず足が止まった
聞こえた声は、牧師様のお仕事部屋から
この声…シスター?
『どうするも何も…あの子をこのまま育てる余裕なんて、うちにはない。引き取ってもらうしかないだろう』
『でも…まだあんな小さな子供なのに…』
『…回復の兆候は見られないんだろう? 昨日も"デビット"と話してたそうじゃないか』
僅かに開いたドアの隙間から覗いて見えたのは、牧師様とシスター
デビットって…僕のお話、してる?
『此処で治療していくのは無理だ。専門に任せよう』
『だからって…精神病院なんて…あの子が回復しないのは、親に捨てられたトラウマをきっとまだ引き摺っているからよ』
『じゃあどうするんだ。君が引き取って親代わりになるとでも?』
『っ…それは…』
シスターの声が萎む
小さく萎んで、見えたのは…昨日見た顔と同じ
悲しそうな顔で、でもどこか枠の外にいるような顔
『……わかったわ…病院に引き渡します』
『…それでいいんだ。手続きは私が明日、してこよう』
……あ…
なんだろう
詳しいことはよくわからなかったけど…嫌な警告音が頭の中で鳴り響いた
…もしかして、また
捨てられる?
『全く、人間というのは酷い生き物ですネェ♡』
『っ!?』
声は真後ろから
驚いて振り返って見えたのは、巨大なお腹だった
『わっ何…ッ?』
『…なんだこのデブ』
『マ! 我輩をデブ呼ばわりとハ♡ 中々やんちゃな子供デスネ♡』
『……え?』
ぽよぽよと大きなお腹を揺らしながら、剥き出しの歯で笑う知らない大人の人
…人というか、ピエロみたいな顔
このピエロさん…僕とデビットの声を一緒に聞いたのに、驚かない