My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
"二重人格者"
それが恐らく、この子が施設にいる理由。
『やーい、化け物っ』
『今日はどっちだ、ジャスデビ? デビット?』
『…化け物じゃないもん…』
『今日は泣き虫ジャスティだーっ』
周りを囲んで嘲笑う町の子供達。
その真ん中で俯いていたジャスデビが、不意に拳を握る。
『……うっせェな』
その口から漏れた声は、さっきとは打って変わって酷く冷たいものだった。
『テメェらうっせーんだよッ! いつもいつも!』
『うわ出た! デビットだ!』
『その舌引っこ抜いて蝶々結びにしてやらァ! 待てゴルァアア!!』
『ぎゃー! 逃げろ!』
『化け物に殺されるぞー!』
物凄い剣幕で追いかけるジャスデビ──…じゃない、デビットに一目散に逃げ去る子供達。
『誰が化け物だ! 一昨日来やがれ!!』
そんな子供達に足を止めると、舌を出して中指を上に突き立て盛大に悪態をつく。
……うん。
この悪態のつき方、すんごく何処かで見たことあるような…。
『ったく! お前もあんな言葉無視しろ、無視!』
『…だって…化け物って…ぼく…』
『ンな訳ねーだろッ』
『…でも、皆…デビットがいるのはおかしいって言うよ』
『自分と違うだけで変人扱いだからな。そんな奴らの言うことなんて信じるな』
それは異様な光景だった。
一人の男の子が二つの声色で話してる。
気弱でか細い声と、荒くきつい声。
同じ声帯なのにその変わり様に、まるで別人が話しているようにも見えた。
『お前は化け物じゃねーよ。オレとお前はふたりでひとつ。それが"ジャスデビ"だ』
『……うん』
『…オラ、帰ろーぜ。腹減った』
『…デビット、もうシスターの前で冷たいこと言っちゃダメだからね』
『…あんでだよ。アイツも嫌な大人だぜ』
『違うよ、シスターは良い人だよ』
『あーハイハイ。うぜーうぜー』
『ちゃんと聞いてってば!』
『ハイハイ』
一人で会話をしながら施設に戻る姿は、少し異様だったけど。
弾む声も浮かんだ表情も、凄く生き生きしていて。
まるで本当に二人の子供が其処に存在しているようだった。