My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
──ィイイン…
聞こえたのは微かな耳鳴りのような音だった。
…気がする。
『ふぇええん…』
泣いている声。
幼い子供の泣き声。
ずびずびと鼻を啜りながら泣くその子は、小さな男の子だった。
『やーい、化け物』
『こっちに寄るな』
『触れたら同じになっちゃうぞー』
その子を遠巻きに見ている同じ年頃の子供達が、容赦ない言葉を吐いていく。
幼い子供の素直な言葉は、時に何より凶器になる。
その加減を知らない言葉は、顔を両手で覆って啜り泣くその子を容赦なく責めていた。
…ああ、なんだか嫌な光景。
『…ぼく…化け物じゃないよ…』
零れ落ちる涙の隙間から、更にか細い声が零れ落ちる。
『じゃあなんだよ、その変な頭』
『その目も、変』
『気持ち悪い』
変だ変だと罵る子供達に、顔を両手で覆ったその子の目元は隠れていて見えない。
だけどその俯いた頭は、金と黒の混じり合った不思議な色合いの髪をしていた。
メッシュを入れて染めているにしては、どこか不自然に色合いの入った髪色。
模様のようにも見えるそれは、確かに変と言われれば変。
そんな髪色なんて見たことがなかったから。
『こぉらッ虐めないの!』
『げっシスターだ!』
『逃げろッ』
そこに一人の修道服を着た女性が歩み寄る。
途端にバタバタと走り逃げていく子供達。
その場に残されたのは、変な髪色の男の子だけ。
『気にしなくていいのよ、あんな言葉。貴方は変なんかじゃないわ』
『ぐす……ほんと…?』
恐る恐る、顔を覆っていた手を離してその子の顔が上がる。
見えたのは、散々泣き腫らして赤くなった目元。
そのくりくりとした幼い目は、茶と青。
左右違う色合いをしていた。