My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「それは違うであるよ、雪」
「え?」
そんな思考を止めたのは、クロウリーの声だった。
予想外の言葉に顔が上がる。
見上げた顔は困ったように笑って、首を横に静かに振った。
「人の想いに正解などない。これは私とエリアーデだから生まれた想いである。雪は雪が感じるままの想いで人を愛せばいい」
「……それがみっともない想いでも?」
「みっともなくても、それが雪自身の想いなら。人を真似た想いよりずっと純粋で綺麗だと私は思う」
「……」
思わずまじまじとクロウリーを見る。
その顔は相変わらず優しい笑みを浮かべたまま、確かにはっきりと言葉は迷わず告げられた。
「だから人を羨む必要などないである。雪は雪のまま、想いやればいい」
「……」
私の神田への想いを知らないクロウリーなのに。その言葉は確かに、私の中の浅ましいと思う感情を和らげてくれた。
「…そう、かな」
「である」
にこりと笑うクロウリーの優しい笑みに、つられて笑みが浮かぶ。
そんな私の顔を見て、クロウリーは一層優しい顔で笑った。
「それで充分であるよ」
「…それ?」
「そんな笑顔を浮かべられる相手がいるなら」
…どんな笑顔してたんだろう。
わからないけど…想い人がいるのはバレちゃったのかな。
「それにそうやって悩み考えるのは、それだけ真剣に想っている証拠である。…その者は幸せであるな」
あ、やっぱりバレたみたい。