My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
羨ましいと思った。
そこまではっきりと言い切れる程に、クロウリーに愛されたエリアーデが。
同時に哀しくもなった。
それでも"破壊"という道でしか、救いがなかったエリアーデの存在が。
「……」
そんな私の思いは情けないものだと思う。
大切なものができて、その大切なものが手に入ってしまうと…もう手放せなくなってしまった。
離したくない
壊したくない
守っていたい
どんどん欲は溢れて尽きなくなる。
ただただ欲しいと、それだけしか望んでいなかったはずなのに。
どんどん望むことは増えていって、みっともなく"生"に縋るようになった。
「…凄いね、クロウリーは」
「そうであるか?」
「…うん」
私もクロウリーみたいに、死をも越えて相手を想う心を持てたなら。そしたら、こんなに色々悩んで苦しまなくても済むのかな。
「私もそうやって…想えたらいいのに」
この身が朽ち果てても神田の一部になれるなら…なんて思えたら。少しはこの苦しみも軽くなるのかな。
でもそんなこと、思いたくても思えない。
だって私が望んでいるのは、死んでも神田と共に在り続けることじゃない。
生きて神田の傍にいること。
…残される者の心の痛みはわかるから。
神田を残して逝きたくない。
ちゃんとその隣に立っていたい。
あの人と同じ場所に立って、同じ空気を吸っていたい。
前でも後ろでも駄目なんだ。
隣で、あの人の傍に居続けたいから。
この目で見て、この口でその名を紡いでいたい。
この肌で体温を感じて、その存在を実感していたい。
それは私だけじゃなくて、神田にも私を実感していてほしい。
その目に私を映して、私の名前を呼んで、私に触れていてほしい。
それは欲塗れな私の想い。