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My important place【D.Gray-man】

第32章 幾恋心



 クロウリーの愛した女性はエリアーデというAKUMAだった。

 エクソシストとAKUMA。
 恋人になんて普通はなれない者同士。
 だけど確かに二人の間には"愛"があったと、アレンは言っていた。





『クロウリーもきっと、本気でエリアーデのことを愛していたんだと思います』





 私はその場にいなかったからわからないけど。
 クロウリーに血を吸われて消えるエリアーデの最期に立ち会ったアレンは、後に私の前でそんなことを呟いていた。


「……クロウリーはさ…もし愛した女性が自分とは同じ世界に住めない存在だってわかってても…変わらず愛することができた?」


 クロウリーはエリアーデがAKUMAだと知らずに、ずっと同じ屋敷で暮らしていたらしい。

 エクソシストとAKUMA。
 それは白と黒の混じり合わない対極の色のように、相容れない存在。
 …それはエクソシストとノアもきっと同じだと思う。


「愛したであるよ」

「…本当に?」


 あまりにあっさりと言い切るクロウリーに、思わず目を向ける。
 私を見下ろす優しい目は、にこりと迷いなく笑った。


「だから今、私は此処にいる」

「……」

「最初はアレンに背中を押されて、エリアーデの死を理由にエクソシストとなる道を決めた。しかし今は…私の意志で此処に立っている。私が守りたいと思う者達がいるから、私は此処にいる」


 クロウリーの視線が私から外れて、楽しそうに衣類を物色するアレン達を見る。


「それを教えてくれたのは、エリアーデだった」


 何かを思い出すように呟くクロウリーの横顔は、優しい。


「前はただただエリアーデを破壊してしまったことを悔やんでいたけれど…最近思う。確かにもうエリアーデの存在はこの世にはない。けれど最期にその血を飲み干した私の中に…その存在は在り続けているのではないかと」


 そっと自分の胸に手を当てて、思いを馳せるように目を瞑る。


「エリアーデは、自分には魂の器など存在しないと言っていたけれど…私にはちゃんとその心があった。あったからこそ、私はエリアーデを愛したのだと思う」


 迷いなき言葉。
 神田とは違う意味で、強い言葉。

 その真っ直ぐな言葉に、私は何も応えられなかった。

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