My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「オレっぽくなくてもオレの本心なんさ。可愛いもんを可愛いって言って何が悪いんさー」
「だから、いちいち言わなくていいっ」
顔を近付けて笑えば、逃げるように距離を取る。
そんな雪の反応こそいちいち可愛くて、つい頬がニヤける。
雪のユウに対する想いは知ってる。
そういうもんを見せてこなかった雪だから、きっとそこに対する想いは強い。
そして多分ユウも…少なからず雪に対して特別な感情はあると思う。
そんな二人の間に割り込もうなんて気はないけど。
こういう時くらい、雪のこんな姿一人占めしたっていいよな。
ユウには悪いけどさ。
「顔、近いから。なんか近いからッ」
「いやだって可愛くて」
「関係なくない!? ってか可愛いとか今まで言ってきたことなかった癖に…ッ」
まぁな。
でも今はそう見えて仕方ないから。
「んじゃ、これからはちゃんと言うようにするさ。雪が慣れるまで」
「…っ」
別に慣れなくてもいんだけど、その反応面白いし。
逃げる雪の頬に手の甲で軽く触れれば、そこは更に色付く。
オレが与えることで見せるその雪の姿は、オレの心を充分に満たした。
──パシャッ
その時だった。
不意に聞こえたシャッター音が──……シャッター音?
「…え。」
「…うわ。」
思わず雪と顔を向ければ、其処には見惚れる程の笑みを浮かべて通信ゴーレムを手にしたリナリーがいた。
…綺麗なんだけど、なんかすげー嫌な笑み。
「とっても楽しそうね、二人共」
「へ?」
「リナリー…まさか…」
「神田にも見せてあげようかしら」
「ぎゃー!! やっぱり!」
「え、ユウ? ユウって…いやいやそれ駄目さオレ殺される気がする」
顔面真っ青で叫ぶ雪と共に慌ててリナリーを止める。
今のシャッター音、ゴーレムで画像撮る時の音だよな。
……まさか今の姿撮られたんさ?
ってかユウって。
オレ殺されるから、多分。
今度こそ刻まれるから!