My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「折角褒めたのに、その反応酷くね?」
「だって兎さんからそんな言葉貰えるなんて…まさかの兎さんから」
「オレはいつになったら人間に昇格するんさ…」
思わず肩を落としてツッコめば、忽ち雪の顔が砕ける。
「あはは、ごめんごめん」
「顔が全く反省の色ねぇんだけど」
「そんなことないよ、反省してます。心から」
「うわ、嘘くさ」
流れる空気は悪くない。
息がし易いって言ってた雪の言葉は、オレにもなんとなくわかる。
だから決して悪くないとは思うんだけど。
思うんだけど、さ。
…もうちょい女らしい反応見せてくれてもよくね?
「はぁ、もういいさ…」
諦めの溜息をつきつつ、視線を雪から逸らす。
そうして先を歩くクロちゃん達に視線を変えようとして、ふと途中で見えたそれに目は止まった。
……こういう時、オレの洞察力ってすげぇなって自分でも思う。
雪だから、かもしんねぇけど。
「雪」
「え? 何」
いつも通りの雪だけど、ふんわりとアップにされて見えている耳元はほんのりと赤い。
……これって。
「もしかして、照れ隠し?」
「……は?」
思わず顔を覗き込む。
うん、赤い。ほんのちょっとだけど。
普段なら見落としてもおかしくねぇけど…やっぱ雪だからか、オレの目はそれを見つけてしまった。
「ここ。赤いから」
耳元に軽く指先で触れる。
するとまたオレを見上げる目が丸くなって───…お。
ほんのりと、少しだけだけど頬が染まった。
「…雪、顔赤いけど」
「い、いちいち言わなくていい」
そんな顔を隠すように逸らされる。
「やっぱ照れ隠しさ?」
「…急にラビっぽくないこと言うからでしょ」
言い訳するように言う雪の姿は、クロちゃんの時とは違うけど確かにオレが望んだ反応で。
…あー…うん。
やべぇ。
可愛い。