My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「じゃあ決定ですね。嬉しいな、こんな綺麗な二人と休日を過ごせるなんて」
「そんな大層なものじゃないよ」
「……」
さらりと笑顔で褒めるアレンに、苦笑する雪とは対照的にリナリーは無言で頬を染めていた。
…やっぱアレンだからだろうな。
オレが褒めてもこんな反応しないさ、リナリー。
「折角だし、クロウリーも一緒に行こうよ」
「私であるか?」
「うん」
ふと思いついたように雪が誘ったのは、オレらを見守っていたクロちゃん。
「遊びは大勢の方が楽しそうだし…こうして休日、一緒に過ごしたことなかったよね」
「そういえば、そうであるな」
笑って誘う雪の表情は柔らかい。
……最近、雪は変わった気がする。
社交的だから誘えば簡単に乗ってくれてたけど、こんな柔らかい笑みを早々浮かべたりはしなかった。
オレと同じで、皆に一線引いてただろうから。
「……」
そんな雪を少なからず変えたのは…やっぱユウなんかな。
そう思うと、もう気持ちに整理は付けたはずなのに少しだけ胸はツキンとする。
……駄目だなー、オレ。
こんなんじゃブックマン失格だってジジイに怒られる。
オレが今此処にいるのも、ブックマンとしてこの聖戦を記録する為。
雪達はいずれオレの中で"記録"となる。
だから元から叶わない想いだってのはわかってんだけど…。
「ラビとも久しぶりだよね、こうして休日に遊ぶの」
「…ん、そうさな」
不意に向けられた笑顔にドキリとする。
リナリーの手で色々と加えられた雪の顔は、女らしい柔らかい雰囲気が溢れていて、そんな顔を見てるだけで鼓動は勝手に早くなった。
……人間だもんな。
どんなに取り繕っても、きっと簡単に切り替えられやしない。
形のない"思い"は、きっとそういうもんだ。