My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「…馬子にも衣装ですね」
「こらっリンク! 雪さんに失礼ですよ!」
「大丈夫だよアレン」
その後アレン君のように大量のスイーツを抱えてやってきたリンク監査官が、雪を見て最初に発した言葉はそんなものだった。
咎めるアレン君に、苦笑混じりにひらひらと雪が手を振る。
「それもちゃんとした褒め言葉だし。ありがとうございます」
「身形は悪くないセッティングです。ただ…一つだけ見落としてる箇所がありますね」
「見落としてる?って近い近い」
下げていた頭を上げる雪に顔を寄せて、リンク監査官はきっぱりと言い切った。
「匂いです」
「匂い?」
「…何変態みたいなこと言ってんですかリンク…」
「…それ以上雪に近寄んなさ…変態が移る」
「匂いであるか…ううむ、私はその嗜好には賛同し兼ねるである…」
「違います。変な想像しないで下さい」
うわぁ、と顔を青くするアレン君達に、これまたきっぱりと否定したリンク監査官が呆れた表情を浮かべた。
「香水です」
「香水?」
「そこにまで気を配れていたら完璧でしたね。勿体無い」
「勿体無いって…」
…リンク監査官って、そういう女子力高かったのね。
ジェリーさんと同じだわ。
「香水かぁ…僕は今のままでも充分完璧だと思いますけど」
「そーさ。変にキツい匂い付けるより、雪の匂いのままの方がいいだろ」
「変態みたいなこと言ってるのは貴方達じゃないんですか。気持ち悪い」
「……」
「あ、リンク変なこと言わないで下さい! 雪さんがそんな目で見てるから!」
「ち、違うさ! 別に体臭が好きとかそんなこと言ってんじゃねぇから…!」
「アレン、ラビ、それ以上は墓穴掘るだけであるよ…」
クロウリーの言う通り。
うわぁ、という顔を今度は雪が浮かべる中、慌てて弁解する二人は墓穴を掘ってるようなものだった。
香水ね…でもほんのり香り付けするくらいならいいんじゃないかな。
今度、雪に合う香水をジェリーさんと選んでみようっと。