My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
でも、
「大丈夫よ、雪。神田はわからないけど…ちゃんと見てくれる人は見てくれるから」
「え?」
ファインダーの皆を追い払った雪越しにその姿を見つけて、軽く手を振る。
「アレン君」
「あ。リナリーも食事に来てたんですね。僕も一緒にいいです──」
ガラガラと大量の料理が乗ったアレン君専用の台車を押しながら、食堂を歩いていたその姿に声をかける。
すると笑顔で近付いたアレン君が、雪の姿を見て止まった。
「………え、雪さん?」
「え、はい。」
その薄い銀と灰色の目を丸くして、次にぱっと浮かべたのは笑顔。
「わぁ、とっても綺麗ですねっ吃驚しました!」
ほらね。
開口一番、ちゃんと女性を褒めてくれる。
アレン君のこういうところ、素敵だと思う。
「僕初めて見ました、こんな綺麗な雪さん」
「う。…ぁ、ありがとう…」
にこにこと笑って隣に腰を下ろすアレン君に、ぎこちなく雪が礼を返す。
褒められ慣れてないんだろうな。
私とジェリーさんが容姿を褒めた時も、恥ずかしそうにしてたし。
…それ、神田の所為じゃないかしら。
いっつも任務で組む度に雪を雑に扱ってた気がするし…。
……なのに恋仲になんてなるんだから。
驚きよね。
「リナリーとジェリーさんが、色々してくれて…」
「へぇ。流石リナリーですね」
その笑顔が私に向いて、少しドキリとする。
…違うわよ、リナリー。
これは褒められてドキッとしただけなんだから。
アレン君は大事なホームの仲間なんだから。
「ううん。雪の素材がよかっただけよ」
「そうかなぁ…リナリーには負けるよ」
「もう。そんなに謙遜しないの」
「謙遜っていうか本当のことなんだけど…」
真顔で首を横に振る雪は、さも当たり前のようにそう口にする。
私の容姿のこと、よく褒めてくれるけど…雪だってちゃんと胸張れるものを持ってるのに。