My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「あ。神田、そっち食堂ですよ」
「…だからなんだ」
「団服ボロボロなんですから、科学班の所に持っていかないと。さっきコムイさんに言われてたでしょ」
「別に飯の後でもいいだろ」
聞こえてきたアレンの言葉に、素っ気なく返す神田の姿を見る。
その姿はいつもの団服姿じゃなく、真っ黒な中着だけ。
それもそのはず。
ビットリオの大剣を受けた団服はボロボロで、神田本人の血によって染まっていない所なんてない程に真っ赤に変わっていた。
そんな団服を着ておけるはずもなく、神田の手にボロ布のように持たれている。
私のファインダーのマントも、神田の血で真っ赤に染まっちゃったもんなぁ…後で洗ったけど中々血は落ちなかった。
あれもう、処分しようかな…。
「ご飯より団服の新調が先でしょ」
「テメェが言うな、大食らい」
コムイ室長が休みをくれたから、団服を新調する時間はあるだろうけど…科学班は忙しい職場だから。
アレンの言う通り、早く持っていってあげた方がいいとは思う。
「全く。雪さんからも言ってあげて下さいよ」
「…え。」
呆れ顔のアレンに急に話を振られて、思わず一瞬間が空く。
そしてばちりと合う神田との視線。
「…あー……うん…そうだね、なら私が持って行こうか」
手持ち無沙汰に頭を掻きながら、視線を逸らして投げ掛ける。
「ああ、いえ。そこまでしなくていいですよ。雪さんに聞き分けの悪い神田を叱咤して欲しかっただけです」
「俺をガキみたいに言うんじゃねぇよ」
「何言ってんですか、未成年でしょ」
「テメェより歳は上だ。目上を敬え」
「人として尊敬できる人じゃないと、敬えませんから。ごめんなさい無理です」
「…あ?」
「わわ、二人共また喧嘩なんて駄目ですよ~っ!」
にっこり笑顔のアレンと、ガンを飛ばす神田。
そんな二人の間でバチバチと散らす殺気の火花に、慌ててゴズが止めに入る。
そうやって自分から離れた神田の視線に、こっそりと私は安堵の溜息をついた。