My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「いやー、よかったよ! 神田くん達が無事で。無事イノセンスも回収できたしね~」
神田が目覚めたその日に、闘技場の事後処理を終えた。
その後一日ローマに身を置いた後、次の日には私達は本部に帰還した。
神田の言う通り、その体は寝ている間にすっかり完治していて、お医者さんの静止も無視して包帯を放り捨てた体には、傷一つ残っていなかった。
ほっとしたけど…改めてその体の凄さを感じた。
死んでも生き返るくらいだもんね…心臓には悪いけど。
「うん。報告書もちゃんと確認したし。休みをあげるから、ゆっくり過ごすといいよ」
提出した報告書を手に、司令室の机の前でにっこりと笑うコムイ室長。
「次の任務くらい、すぐに発てる」
「まぁまぁ。そうは言っても、今回一番体を酷使したのは神田くんだからね。もうちょっと自分を労わってあげて」
さらりと言い切る神田に、にこにこと変わらない笑みを室長は何故か私に向けた。
「ね、雪くん」
「…そうですね」
まぁ…うん。そこは賛同するけど。
…私に話を振らないで下さい。
………今は。
「──それでは失礼します」
報告を全て終えて、司令室を後にする。
「いやぁ、今回は色々勉強になりました。ありがとうございます、神田さんっ雪先輩とアレンさんも」
「いいえ、僕は特に何もやってませんよ」
「イノセンス回収できたのは、下調べしていてくれたゴズと神田のお陰だから」
廊下に出るや否や、ガバッと頭を下げてくるゴズにアレンと一緒に首を横に振る。
イノセンスをビットリオから回収したのは神田だし、私は特に何もしていない。
その後の事後処理や報告書作成も、間接的に手伝いはしたけどほとんどのことはゴズにやらせた。
元々これはゴズの任務だったし、本人がやりたがったから。
それを伝えれば、うるうるとゴズは感動したように目元を潤ませた。
「初任務、頑張ったね」
「はいぃっ」
労うように、大きな体に手を伸ばして軽く胸を叩く。
もう一度がばりと勢いよく下げる頭に、つい笑いが零れた。
うん、とにかくこうして皆無事に戻って来れてよかった。