My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「……ありがと…」
ぽそぽそと小さな声で紡がれる、礼の言葉。
別に礼が欲しくて言った訳じゃない。
俺が欲しいのは──
「……」
「?」
腕の中のその存在を改めて見る。
ファインダーのフードで隠していない髪に指を差し込んで、僅かに顔を離す。
その僅かにできた距離に未だに少し赤い顔で、きょとんと見てくる月城と目が重なり合う。
そうして視線を絡めたまま、顔を寄せた。
「っ」
近付く距離に、月城が反射的に目を瞑る。
視界を閉じて無防備になったその唇に、そのまま俺の口を重ねた。
今度は一瞬じゃない。
その唇の柔らかさを感じ取るように。
「──……」
間を置いて、ゆっくりと顔を離す。
じんわりと頰を染めて唇を結んだ月城の顔が見えた。
唇同様、強く閉じられたままの目に思わず口元が緩む。
「なんだその反応」
「………何って…」
おずおずと暗い色の目が開く。
「ガキじゃねぇだろ」
「そうだけど……こういうこと…したこと…ないし…」
段々と声が尻窄みしていく。
確かにこいつの色恋なんて聞いたことはなかったな。
……ってことは、俺が初めてってことか。
「…ふぅん」
こいつのこういう反応を見たのは俺だけかと思うと、自然と胸が満ちた。
「じゃあ慣れろよ、俺で」
「って逆になんで神田はそんな慣れてんのっ?」
顔を寄せれば、仰け反るように後ろに顔を退きながら言い返してくる。
「まさか女神様達に手を出してたとか…っ」
「お前、その時々ぶっ込んでくる意味不明な発言はなんだ」
誰だ女神って。
そんな奴、教団にいねぇよ。