My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「なっ…ッ、…」
言葉になってない声がその口から零れて、パクパクと口を開けたり閉じたり。相当パニックになってるらしい。
見てて面白いが、今はそんな月城を観察する気はない。
「欲しいなら、俺をくれてやる」
行動で示したのは、言葉より伝わると思ったからだ。
…こいつ、俺が言ったこと忘れてく癖があるからな。
「だからお前も俺に寄越せ」
「…え…?」
頭部に回した手は離さず、近い距離ではっきりと告げる。
「俺が欲しいのはお前だ、月城。お前を俺にくれるなら、俺自身もお前にやる」
好きだとか、そういう言葉を口にする前に、こいつを逃がさない為に何より欲した言葉は自然と口をついて出た。
「っえ、なん…ッ…欲しい…って、…え?」
余程予想外だったのか、困惑気味に拙い言葉が月城の口から溢れ出る。
赤い顔でおどおどと。
「ぅ、嘘…」
「嘘じゃねぇよ。なんでわざわざ嘘つく必要がある」
「……」
はっきり言えば、その言葉に納得したのか。赤い顔のまま押し黙る。
そして空いた手を自分の顔に持っていくと──
「…痛い」
「……」
おいコラ。
何頬抓って現実か確かめてんだ。