• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第30章 想いふたつ



「にー、」

「わっ…わかった言うから…!」


 ドスの効いた声で続ければ、慌てた月城が両手で俺の口を塞いだ。





「か…神田だよ…っ!」





 俯いてそのままの勢いで、その口から漏れたのははっきりとした俺の名前。





「他は…っ何もなくてもいいから…ッ」





 思わず黙り込む。
 必死に紡ぐ辿々しい月城のその声を、聞き逃さないように。





「神田が…っ………欲しい、…」





 聞き間違いようのない、はっきりと俺を求めるその声を耳にした時。胸の奥でドクリと心臓が脈打った。
 目の前の月城から目が離せなくなって、焦げ付いた想いが内側から強く胸を叩く。


「え、と…返事を期待してる訳じゃないから…っ」


 逃げるように、俯いたまま月城の体が距離を取ろうとする。
 それより早く、口から離れた細い手首を掴んだ。


「逃がさねぇって言っただろ」


 やっとその口から言わせたんだ。
 誰が逃がすかよ。


「ちゃんとくれてやるから、しっかりこっちを見てろ」


 手首を掴んだまま、片手で頭部を掴む。
 頭が割れるだのなんだの前に文句を言ってたから、そう力は入れずに。


「な──」


 けれどその状況を月城が頭で把握する前に、行動に移した。
 逃がさない為に。

 頭部を引き寄せて上がった月城の視線と目が重なる。
 それでも動きは止めずに、そのまま顔の距離を詰めた。


「…ん…っ」


 驚き言葉を発そうとした声ごと飲み込むように、その口を俺の口で塞ぐ。

 時間で言えば恐らく一瞬。
 その一瞬でも唇の感触をしっかりと確かめて、顔を離した。


「……」


 限界まで驚きで丸く見開いた月城の目が、間近に見える。
 一瞬、沈黙した後。


「──っ…!?」


 月城の顔は真っ赤に染まった。
 …前も思ったがまるで林檎だな。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp