• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第30章 想いふたつ



「なんで殴るんだよ阿呆か」


 こいつを脅して、吐き出させることもできるかもしれない。
 でも恐怖心を与えて言葉にさせたい訳じゃない。


「月城。お前が欲しいもんはなんだ」


 だからなるべく怯えさせないよう、その頬に手を当てて問いかけた。
 あの風邪をひいた夜にかけた問いと、同じもんを。


「ちゃんと言え」

「欲しいものって…」

「これ以上すっ呆けたらそれこそ殴るからな」

「……」


 殴るとは口にしても、脅すようには口にしない。
 すると月城は黙り込んだ。
 どこか躊躇するように。


「言え」

「…っ」


 再度催促すれば、視線が泳ぐ。
 どこか迷うように。

 …俺の問いの真意はやっぱり気付いているらしい。


「……」


 それでもその口は唇を噛み締めて、開こうとしなかった。

 ………お前な。


「……だんまり決め込むなよ」


 脅さないと決めてたが、逃がす気は到底ねぇんだよ。
 言わないなら実力行使だ。


「後5秒で言わねぇと殴るからな」

「っ!? それ思いっきりDV!」

「いーち、」

「!」


 殴る気はないが、その固い口を開けさせる為に秒読みを開始する。





『……好き』





 見てはいないが、確かに聞いた月城の声で紡がれた好意を示す言葉。
 それを聞いて黙って見過ごせる程、俺の心はできてない。

 …そろそろ限界なんだよ、俺も。


 言わなかったらその口、赤くなるまで抓るからな。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp