My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「神田…っ?」
暗くなっていく視界。
月城の顔も見えなくなって、声だけが耳に薄らと届く。
…そんな声出すなよ
どうせまたすぐ再生する
この体はそういう造りで出来ている
「……神田…?」
だからすぐ戻ってくる
それまでモヤシの後ろにでも隠れとけ
あいつに頼るのはいけ好かないが、死ぬよりマシだろ
…お前は俺みたいに"戻って"これねぇんだから
「神田…!」
…煩ぇな
だから戻ってくるって言ってんだろ
呼ぶな、そんな声で
今はお前の涙を、拭いてやることはできねぇんだから
何度も何度も経験した。
もう慣れた"死"。
頭では慣れてても、その痛みと不快感は慣れない。
体中の痛みが最後には麻痺して、熱いも寒いもわからなくなる。
そうやってぷつりと最期には糸が切れるように途切れる意識。
感覚なんて何もない。
なのに。
「神田…ッ!」
その泣きそうな叫びを耳にしながら逝く瞬間。
胸の奥がズキリと鈍く痛んだ気がした。
そしていつものように、意識は真っ暗な闇に消えた。