My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「ん、どうぞ」
「え?」
支給された料理を広場にあったベンチに座ってバクバクと食していたら、隣から同じお皿を雪さんに差し出された。
「私はあんまりお腹減ってないし。アレン食べていいよ」
「でも…」
「それだけじゃ足りないでしょ」
それは…そうだけど。
でも雪さんの分まで頂くなんて。
そんな渋る僕を見兼ねてか、雪さんはずいっと僕の手にお皿を乗せてしまった。
「いいから。私は平気」
「…こんなことまで気遣わなくていいですよ。いくら僕がエクソシストだからって…」
「気遣いじゃないよ。好意でやってるだけ。年上のご好意はあり難く頂きましょう」
にっこり笑って首を横に振る雪さん。
そんなことを言われると強くは断れなくて、結局頂くことにした。
…食欲には勝てなかったんです。
「にしても…此処にも似たような怖い人が沢山だね…」
「ほうへふね。ふぇっひょふ、ほほへはべへもおなひでひた」
「…うん。ご飯飲み込んでから喋ろうかアレン」
辺りを見渡す雪さんの言葉通り。
結局此処の支給されてる料理を貰いに来る人も、ガラの悪そうな人達ばかりだった。
街には普通の民間人もいたみたいだけど、この広場に集まっているのは全て武装したその人達だけ。
なんだろう…何処かで戦争でも始める気なのかな。
「でも本当かよ。ビットリオなんて幽霊の話」
「さぁなぁ。金持ちの考えることはわかんねぇな」
あちこちで話す武装した人達の会話に耳を傾けていると、そこには聞いたことのある名前があった。
「雪さん、今あの人達…」
「うん」
口の中いっぱいにあったご飯を飲み込んで、隣に座っていた雪さんに声をかける。
すると同じく耳にしていたらしく、雪さんも頷いて腰を上げた。
「ビットリオって、確か千年生きてるって噂の剣闘士の名前でしょ。アレンは此処でご飯食べて待ってて。情報収集してくる」
「あっ待って下さい、僕も行きます!」
言うや否や、足早に武装した人達の所へ向かってしまった。
慌てて目の前の料理を全て口の中に掻き込んで後を追う。
もしかしたら神田のことも、何か知れるかもしれない。