My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
──────────
夜中なこともあって全く人気のない中華街。
「…いたさ」
やっと見つけた姿に安堵の息をつく。
「本当ですかっ」
「ああ。そんな細い体じゃあ、ろくなもん食ってねぇんだろ。姉ちゃんになら幾らでも売ってやるよ」
「ありがとうございますっ」
早々土木作業を終えた雪はオレの目に止まった時には、既に一つの露店の前で交渉を進めて食料調達をしていた。
流石。
ファインダー辞めても雪なら別の仕事でもやっていけるんじゃねぇのかな。
土木作業とか接客業とか。
「じゃあこの中華まん6つと海老シュウマイ3パックと…」
「おいおい、見た目によらず良い食欲っぷりだなぁ」
「あはは、それ程でも」
笑う店主らしき男に、テンポよく愛想を振りまく雪はいつもの顔。
オレのよく知ってる、いつもの雪だ。
「こりゃあ、オレの出番はねぇさな…」
出ていかなくても、あそこで飯買ってすぐ戻って来そうだし。
そう思うと、なんとなく足はそれ以上進まなかった。
オレが変に出ていって、交渉の邪魔になってもな。
「あの人、お兄さんの知り合いですか?」
不意に聞こえた声は、後ろから。
「へ?」
振り返れば、随分と背丈の低い人物が其処にいた。
頭まですっぽりフードを被ったマントを羽織ってるから、見た目はわかんねぇけど…声からして、女。
「知り合いなら、声をかけた方がいいですよ」
「…なんでさ?」
フードを被った顔は見えない。
静かにそう告げる声は子供のような幼さがあるのに、どこか落ち着いていた。
「疾しいことされますから」
疾しいこと?
突拍子もない言葉に思わずぽかんとしていると、そのマントを羽織った小さな手が、すっと遠目にいる雪を指差した。
「見ていればわかります」
「見てればって…」
つられて目を向ける。
「よーし、そんな姉ちゃんにはサービスしてやる。タダで中華スープもやるよ、持ってきな」
「わ、本当ですかっ」
其処には変わらず笑顔で談話しながら、やりとりしてる雪と店主の男がいた。