My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
『ラビさん、雪さん』
『開けてくれますか?』
『ここ、なんか開かないんスけど』
何度も、繰り返し繰り返し。
それはまるであの人形が一定に出していた"声"のように。
「ら、ラビ…」
「これ…チャオジーじゃねぇさ…」
思わずお互いの腕を掴んで、ドアから後退る。
「チャオジーじゃないなら、なんなの…」
「オレが知るかよ…」
『チャオジーっス』
まるで私達の声に応えるかのように名乗るその"声"に、びくりと二人で体を跳ねさせた。
「チ…チャオジー?」
本当に?
恐る恐る問いかけてみる。
『俺、チャオジーっス』
もう一度、"声"が名乗る。
「じゃあなんでそんな怖い喋り方──」
『仲良くしてね』
え?
『きゃはははは』
『俺、チャオジーっス』
『仲良くしてね』
「っ…!」
違う。
これはチャオジーじゃない。
『ラビさん、雪さん』
『仲良くしてね』
『ここ開けてくれますか?』
『きゃはははは』
淡々と喋るその合間に聞こえる台詞は、あの人形が発していた台詞。
このドアの向こうにいるのは、きっとチャオジーじゃない。
「ラ、ビ…これ…」
「あの人形さ…?」
お互いに顔を真っ青にして、その場で硬直する。
「っ…あの人形なら、イノセンスかもしんねぇ」
先に動いたのはラビだった。
「ここをぶち破るさ!」
「ま、待って!」
灯り代わりにしていた鉄槌を振ろうとするラビの腕を、抱くように掴んで咄嗟に止める。
「本当にイノセンスなら当たったらまずいよ…!」
ラビの鉄槌は遠近両用の武器だけど、その破壊力はどれも大きい。
あのドアを壊したら、向こう側にある人形まで破壊し兼ねない。
「別の方法で出ないと!」
「別の方法って何があるんさッ」
「ええっと…壁に穴を開けるとかっ?」
お互いにあたふたしながらも、どうにか頭を働かせる。
「壁さな! じゃあ──っ!」
早速と壁に向き直ったラビが、動きを止めた。