My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「…確かにオレは、ユウやアレンみたいな教団のエクソシストじゃねぇけど…」
ティムとの秘密のことなのか、その問いが示す意味ははっきりとはわからなかった。
だけど小さな声で紡がれるその言葉は、ラビの立場を思い出させた。
ラビの本職であるブックマンは、常に中立の立場でいなければならない。
教団に身を置いていても、完全に教団側のエクソシストとして戦うことはできない。
傍観者でいなくちゃいけないのは、一歩距離を置いていれば楽だけど…きっと心を寄り添えてしまったら、辛いもの。
「オレには頼れねぇ?」
小さな掠れた声で、ラビが問いかけてくる。
背中に回された腕の力が、僅かに強くなった。
「……ラビ…」
…もしかしたら、ラビなら私を受け入れてくれるかもしれない。
その中立の立場なら、ノアのことも秘密にしてくれるかもしれない。
万が一それが教団にバレてしまっても、教団でしか生きられない神田とは違うから。
ブックマンとして生きていく道が、ラビにはある。
それを思えば、このことを伝えるのは神田よりラビの方がきっとずっと良い。
「……」
…ああ、そっか。
「…ありがと」
漠然と納得すると同時に、浮かんだその想いは当たり前に私の心に浸透した。
「神田やチャオジーと同じ。私にとって、ラビはラビだよ。誰もその代わりはできない」
どんなにラビの立場がよくたって。
どんなに神田との関係が作られたものだったって。
きっと私が選ぶ道は、最初から決まってる。
「ラビと一緒にいる時の空気は、私には凄く楽で…息がし易かった。それは、ラビだからできることだよ」
ここでラビの手を取れば、この渦巻く不安を軽くできるかもしれない。
…でも、このことを口にするなら…一番最初に伝えたい相手は、決まってる。
この、抱えた想いを向けたい人。