My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「一人で大丈夫?」
「っス! それより二人共、怖がりなんスから。そっちの方が心配っスよ」
「「……」」
一人で用を足しに行くために部屋を出ていくチャオジーを、心配して見送る。
すると逆に笑顔で心配返しされ、思わずラビと押し黙った。
…面目ない。
「ちゃんと二人でこの部屋にいて下さいね。さっきみたいに走り回ったら駄目っスからね、ラビさん」
「…オレ、一応先輩なんだけど…」
「うん、ちゃんと捕まえておくから。チャオジーも早く戻ってきてね」
「オイ」
ぶつくさと文句を言うラビの服を軽く掴んだまま、笑顔でチャオジーに手を振る。
ジト目で見てくるその翡翠色の目も敢えて無視。
仕方ないでしょ、チャオジーが言ってることは的を得てます。
「──さて。私達は調査の続きするよ」
チャオジーを見送った後、再び水浸しの部屋に戻る。
パシャリと水を踏むと、やっぱり小さな違和感。
「…ねぇラビ」
「なんさ」
「この水、可笑しくない?」
「そういやそれ、さっきも言ってなかったさ?」
瓦礫の上に避難しながら、身を屈めて目の前の水の床を見る。
「なんか、ピリピリするというか…」
「ぴりぴり?」
隣で同じように瓦礫に上がって、屈んだラビが覗いてくる。
目の前の水に、そうっと指先で触れてみた。
ピリ、とした微かな違和感。
「ほら、やっぱり」
「やっぱりって…オレ、なんにも感じねぇけど」
同じように水に指を付けたラビが、不思議そうに首を傾げる。
ラビは感じてないの?
…でもこの感じは、気の所為って言葉で片付けられないんだけどな…。
「…雪…あんま変なこと言うなさ…」
そんな私に、ぶるりと体を震わせたラビが顔を青くする。
あ、その反応やめて。
「怖いだろ」
「わざと言ってる訳じゃないから」
「じゃあなんなんさ、それ」
「それがわかったら苦労しな──」
灯りに照らされたお互いの影が、ゆらりと揺れる。
あ。
「うわっ」
思わず持っていた灯りに目を向ければ、ゆらゆらと小さくなっていく炎。
「どうしよう、火が…っ」
「このタイミングでかよっ」