My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「オレが思うに、わざと二人を組ませてるんじゃねぇかな」
「なんでっスか?」
「人ってもんは場数踏めば、それなりに適応していく生き物だからな。ユウは特に誰とも慣れ合わねぇ性格だから、敢えて同じ面子で組ませてるんさ」
「それってつまり…」
「初対面より、慣れ親しんだ相手との方が任務成功率は上がるだろ。フツーに考えて」
「おー、成程!」
…確かに。
ラビの言うことは尤もだと思う。
神田は誰とでも組ませるには、柔軟な性格じゃないから。それなら同じ相手と組ませ続けた方が、そのうちに慣れて任務成功率は上がるかもしれない。
私もなんだかんだ神田相手の雑用に手馴れたから、任務遂行は初期よりスムーズに行えるようになった。
「……」
でもそれじゃあ…神田が私を見てくれるようになったのは、場数を踏んだからってことなのかな。
私に、自分を見せてろって言ってくれたのは。
ちゃんと見てるって、言ってくれたのは。
他の人より少し、任務で一緒になることが多かったから。
そのお陰なのかな。
…なんかやだな、それ。
それなら、私じゃなくてもよかったかもしれない。
私じゃなく、他の誰かが神田とバディを組まされてたら…その人が神田の目に映る人になっていたかもしれない。
「……」
駄目だ。
若干凹みそうになった思いを振り払うように、頭を軽く振る。
神田は迷いなく、私を見てるって言ってくれた。
信じろって、そう言ってくれた。
例えラビの言う通りだったとしても、今私が見ていたい人は神田だから。
きっと神田も同じように、見ていてくれてるから。
なら、きっとそれでいい。
「…チャオジーは食べる?」
笑顔を浮かべて、チャオジーに携帯食を差し出す。
「あ、はいっス!」
頷いて受け取るチャオジーを見ながら、簡単に揺らぐ自分の心に小さく溜息をついた。
誰かの為に、なんて今まで思ったことなかったから…慣れてないだけなのかもしれないけど。
私は神田のこととなると、どうにも心が揺れやすい。
神田の傍にいるだけで、なんだか安心して。
神田が傍にいないと、なんだか寂しくて。
その存在に一喜一憂する。
「…こういうものなのかな」
人を思う気持ちって。