My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「言えよ、誰にやるか。聞いてるだけだろ」
「だから自分用だって…ッ」
「汗ダラダラ流してる奴の言うことなんざ、説得力ねぇよ」
「これは雨水ですッ」
そんな押し問答を繰り返すこと数分。
どうにも逃がしてくれない神田に、本気で焦る。
適当に名前を挙げればいいんだろうけど、こういうチョコをあげるような仲の人は教団にいないから。
思い付かない。
ラビとかアレンとかの名前出したら、なんか怒られそうだし。
リナリーやミランダさんと一緒に買ってるから、女性にあげる友チョコなんて言い訳はできない。
「し…仕事仲間にだよ」
結局、当たり障りなく返すことにした。
「誰だよ」
「…よく任務で一緒になってる人」
「そんな中途半端な表現じゃわかんねぇだろ」
「……よく仕事に厳しくて、駄目出ししてくる人」
「だから誰だよ」
「………口が悪くて手も早くて、誰よりも任務にストイックな人」
「だから誰だって」
あまりに神田が気付かないから、つい色々ヒントを挙げてしまった。
…でも本当にここまで言って気付かないなんて。
「……」
「聞いてるだけだろ」
再度神田が問いかけてくる。
その顔はどことなく険しい。
…神田にだよって言ったら、どんな反応するのかな。
言う気は全くなかったのに、なんとなくそんな気が湧いた。
多分、ここまで私を心配して捜し出してくれた神田に…その日頃の感謝を伝えるくらいなら、してもいいかなと思ったから。
「最後に二人でこなした任務は、年越しのニューヨーク」
そう伝えれば、やっと理解したのか。
神田の黒く鋭い目が、丸く見開いた。
「……」
ぽかんとした、年相応に見える表情。
「…一応、一番任務でお世話になってるし…バレンタインだし…日頃の感謝を込めてって、ことで…」
そんな神田は珍しかったけど、それ以上に私もいっぱいいっぱいで、なんとかそう言い訳のように付け足す。