My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「──で、」
じんわりと染み入る自分の気持ちに浸っていると、不意に手首を掴む手に更に力が入った。
「俺が捜し回ってる間、お前はなんでこんなもん悠長に買ってんだ」
僅かに痛いくらいに力を込めて、持ち上げた手首の先には──…あ。
ずっと握っていた、あのチョコが入った袋が。
「い、痛い痛いっ違う、神田それ誤解っ」
「何が誤解っつーんだよ。あんなに食った癖に、まだ腹減ってんのか。モヤシと同じじゃねぇか」
ギロリと据わった目で睨んでくる神田に思わず腕を退く。
なのに手首を掴んだ手はビクともせず、全く私を解放してくれそうになかった。
お互いに座り込んでるから、いつもより顔の距離も近い。
この至近距離でその顔は怖いから!
「これは前にリナリー達とベルギーに行った時に買ったのっ」
「ベルギー?」
「任務で。ミランダさんも一緒に」
「…何任務中に遊んでんだよ、お前ら」
「それは、…で、でもちゃんと任務後に行ったから」
しどろもどろに応える私を、じぃーっと睨んでくる神田の視線が痛い。
「ベルギーってチョコが有名なんだよ。此処のお店のチョコ、美味しいから」
「……」
苦笑混じりに言えば、じっとその目がチョコに向く。
あ、あんまり見ないでくれるかな…雨で濡れちゃって、歪になっちゃってるから。
じっとチョコの袋を見ていたかと思うと、神田のその顔は不意に険しくなった。
「…誰にやるんだ、これ」
意表を突かれたその言葉に、思わずドキリとする。
なんであげるってわかったの。
そんな話してないのに──……あ!
「げっ」
慌てて袋を見れば、そこには買う際に店員さんがラッピングしてくれた飾りのリボンがついていた。
そこには筆記体で"For you"と書かれたシールもついている。
まずい、これじゃあプレゼント用だって誰が見てもわかる。
「ち、違う違う。自分用に買ったけど…ほらっバレンタイン近かったから、そういうラッピングされただけで…っ」
「目が泳いでんぞ、お前」
「そんなことないない」
ぶんぶんと強く首を横に振る。
でもどんなに否定しても、神田はジト目で睨んでくる。
その手はしっかりと私の手首を握って、放してくれない。