My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
「じゃあミランダさんがこれで、リナリーがこっちだね」
ミランダさんが選んだのは、花柄やハートの可愛らしいデザインが幾つも並ぶヴィタメールチョコ。
リナリーが選んだのは、シンプルなピエールのトリュフチョコ。
流石ベルギー、どっちもお洒落で美味しそう。
「それで雪は?」
「え?」
「雪ちゃんも一緒に買いましょうよ」
思わずショーウィンドウから顔を上げれば、にこにこと笑うリナリーとミランダさんに両隣から挟まれる。
いや…でも私、別にあげる人いないし…。
今までだってバレンタインだからってイベントみたいなことはしたことない。
私には普通の日と変わらない一日。
「自分の為に買うにしても、こんな高級チョコレートなんて…」
「あげる人ならいるじゃない」
誰。
当たり前に言ってくるリナリーに、思わず目で問う。
「神田よ、神田」
「ぶっふッ」
あまりに予想外な人の名を出されて、つい真顔で吹いてしまった。
神田って…あの神田ですか。
あの美形という仮面を被った暴君ですか。
いやいやいや。
「ないない。なんで神田。ないないない」
「あら、神田くんは私もぴったりだと思うけど」
「なんで」
思わずミランダさんを凝視する。
「だってほら。神田くんと雪ちゃんって仲良しじゃない?」
「…はい?」
どこをどう見たらそんなふうに見えるんだろう。
両手を合わせて「ねっ」と笑顔を見せてくるミランダさんに思わず目が点になる。
「私もそう思ってたのよ。最近、一緒にご飯を食べてる姿よく見かけるし」
「あれはただ…任務で一緒になることが多いから、その前後の流れで一緒に食べてるというか…」
「あら。私は休みの日に、神田くんと組み手しているところを見たわ」
「あれはただ、自分を鍛える為に付き合ってもらってるだけで…」
別に深い意味なんてない。