My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「でも神田、甘いの苦手だろうし…これも濡れちゃったから。気持ちだけってことで……いいかな、」
恐る恐る伺うように問いかける。
するとその目は不意に、手の中にあるチョコの袋に向いて。
「あ、」
呆気なく、すいと袋を取られた。
「…袋、開いてるぞこれ」
「私が一つ食べちゃって…って、駄目駄目! 本当に濡れて美味しくなくなってるから…!」
開いた袋から、神田の長い指が一粒チョコを取り出す。
躊躇うことなくその指は自分の口の中に、その歪に溶けたチョコを放り込んだ。
た、食べちゃった…!
本当に後味微妙なのに…!
「……」
「…か、神田…?」
むぐむぐと口の中で租借して、ごくんと飲み込む。
その一連の動作の間、神田は一言も発さず表情も無のまま。
「…………甘ぇ…」
やがてぽつりと零した声は、眉間に皺寄せた顔と共に。
…うん。
やっぱりビターでも甘かったんだね…。
「だから言ったのに…ってまだ食べるのっ?」
「俺が貰ったもんなら、俺がどうしようと勝手だろ」
「そうだけど…っ」
眉間に皺を寄せてるのに、その手はもう一粒チョコを口に放る。
「まともに飯食ってねぇんだ、腹減ってんだよ」
「それなら後でご飯でも買いに──」
「これでいい」
そう言うと、あっという間に神田は袋の中のチョコを完食してしまった。
食べちゃった…全部。
去年のプレゼントのお菓子類は、食べなかった人なのに…。
…余程お腹減ってたのかな。
……。
…多分、違う。
なんとなくだけど、そう思った。
お腹が減ってても、あの飲食店の料理は口にしなかった神田だから。
それでも私のあげた物を口にしてくれたってことは──
「……」
少しくらい、自惚れてもいいのかな。