My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
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白い霧の空を仰ぐ。
その視線をゆるりと下げると、ワイズリーは一つ吐息を零した。
「(なんと言うか…)…よくぞ我慢できたの」
「言うな」
思わず隣の男を見れば、顔はそっぽを向いている。
それでも同情してしまう。
あれでは生殺しもいいところだ。
「いやはや、驚きはした。まさか雪とそこまでの関係を繋げていたとは」
「…どこまで覗いたんだよ。全部?」
「大体は」
「うっわ。悪趣味」
「わかって許したのはティキじゃろう?」
「つーか、"繋げて"いる間は覗こうと思わなかったわけ? どういう心境」
「雪の為だ。雪がティキに会いたいと言ったのだから、その時間を邪魔するような無粋はしないぞ」
「俺の時間は思いっきり邪魔してくるのに?」
「主は主。雪は雪、だ」
はっきりと告げれば、ジト目の顔がようやくこちらを向く。
それでも理解できるところはあるのか、それ以上は反抗することなくティキは肩を竦めた。
「でももう行かねぇよ。雪と約束したから。続きは外だ」
「いいのか?」
「二度と覗き魔のいる所であんなことしない」
「なんじゃ、残念」
「残念がるなよ…家族の性事情なんかに興味持つな。シェリルじゃあるまいし」
鳥肌を立てながら嫌悪するティキに、心外とばかりにワイズリーの頬が膨らむ。
「何を言う。ならばその"家族"である雪に欲情した己はなんだ」
「あー…それはそれ」
「なんとも都合がいい思考じゃのう」
いつもなら、お前には言われたくないと秒で反抗するところ、何か思うことがあるのか。
ティキは沈黙を作ると、緩やかに視線を流した。
「まぁ、俺は悪人だし? 雪を手に入れられるんなら、卑怯なことも都合よくも考える」