My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「……まじかよ」
「?」
ゴポゴポと激しい音を立てる。
それが何を意味しているのかティキは知っていた。
分厚いカーテンを横目で見たかと思えば、力を失くしたように頭を垂れる。
「このタイミングとか…酷くね…?」
「ティ、キ?」
朧気な声が縋る。
促されるように顔を上げて、熱い雪の視線と交えた。
潤んだ瞳。
半開いた唇から覗く舌先。
高揚して染まる頬。
汗ばみ肌に貼り着く髪先。
今すぐにでも貪り尽くしたい果実が、目の前にあるというのに。
味わう時間は途切れてしまった。
「…ごめんな、雪。時間だ」
「…え…?」
「"外"が呼んでる。すぐに目が覚める」
「め…?」
此処は夢だと知っているはずなのに、快楽に溺れた意識ははっきりしていない。
己の手に堕ちたその姿はなんとも愛らしくて、離し難くて──切ない。
「…自業自得ってやつか」
自分がそうさせた癖に。
最後に雪らしい顔を見られないことが、名残惜しく感じた。
「悪い。俺の私利私欲を押し付けた」
「…そんなこと、ない、よ…私だってティキが、欲しく、て…」
「あー駄目。今はそれ駄目。俺が地獄見るから」
「?」
思わず腰を突き上げたくなる。
衝動のままに喰らい付きたい。
しかしここで理性を失くせば、それこそ全てが不完全燃焼に終わってしまう。
誘うように待ち侘びるように見上げてくる熱い雪の視線に、ティキは深呼吸を繋げた。
「雪」
ゆっくりと呼吸を繋いで、気を静める。
体の一部は雪を感じたまま。そっと、額を重ね合わせた。
「憶えていて。感覚。肌。温もり。全部」
「ティキ…?」
「俺の熱。感じて、刻んで」
「ん…っ」
ふわりと重なる唇。
深く交わるものは、愛撫のように優しい。
しかし熱い吐息を零して雪が追えば、あっさりと唇は離れた。
「ぁ…」
欲を刻み付けられた体が、更なる欲を求める。
「ティキ…もっと、」
「これ以上は、お預け」
「なん、で?」